建築学教育プログラムの教育概要
現代社会の建築分野への要求は多種多様です。建物の建設から運用、解体までを視野に入れた省エネルギー化および、コスト削減、伝統建築の保存・利活用、建築廃材の再利用などが要請されています。また、防災対策をはじめ、高齢者や障害者に健康な生活を保障するユニバーサルデザイン、さらには文化的に質の高い建築が要求されています。
本学科の教育プログラムは、以下のようなプロセスとなっています。
建築学教育プログラム 教育紹介
建築学教育プログラム卒業後すぐに二級建築士の受験資格が得られ、また卒業後実務経験2年を経た後に一級建築士の受験資格が得られます。また、JABEE(日本技術者教育認定機構)より、教育プログラムが社会の要求水準を満たしているとういう認定を受けています。本学科の卒業生は、一般教養および工学基礎の知識や技能、さらには建築学の専門知識と能力を持つことが保障されます。
大学院土木建築学専攻 教育コースの紹介
建築学コース
土木建築学専攻の主軸として位置づけられるコースです。計画系、環境・設備系、構造系、生産系の各専門分野に高度な授業科目を多数用意しており、いずれかの専門分野について学習研究すると共に、分野をまたがって複合的に学習研究する場を提供します。
建築設計コース
建築設計コースは、建築の設計に特化した専門コースです。カリキュラムは、設計にかかわる創造性豊かな発想を育成し、それを具体化できるような実践的演習を中心に編成しています。修士設計を修士論文にかわるものとして審査・評価対象とすることも特徴のひとつです。UIA等の世界基準の資格認定を見据えた次世代型建築コースです。
建築都市文化コース
建築都市文化コースは、建築学の学部教育を受けていない他学部の卒業生、並びに社会人を対象とした少人数の教育コースです。学生の多様なバックグラウンドに配慮しつつ、最先端の知識を含めて建築学及び建築都市文化学の専門知識を幅広く教育し、修士(学術)を育成します。建築学コースが実践的な修士(工学)の育成を目指し、2年間の修士論文研究を課すのに対して、本教育コースでは授業を重視し、修士論文研究は1年間とします。
建築学教育プログラムの研究内容
計画系
常に変革を求められ、多様化する社会に対応する建築や都市のあり方を探求する為に、機能や意匠面だけに捉われることなく、総合的な視座から計画を具現化する手立てを系統的なカリキュラムにそって修得します。世界の建築・都市の変遷を学ぶことから、未来へ繋ぐ先達の知恵を読み取り発展させるという建築学の特性を活かした研究の場を目指します。
建築計画
機能性や快適性に配慮しながら、住宅建築から大規模複合建築まで多様な建築タイプの計画について包括的に研究します。次世代の建築に対応可能な建築計画のあり方を地域特性とグローバルの双方の視点から追求することを目指しています。
(写真:本学科教員設計の複合施設)
都市計画
自然と人間社会とのより良い調和や社会的課題の解決を目的とした、都市開発やパブリック空間のデザイン、市民参画のまちづくりついて研究します。また、地域計画策定のためにGIS(地理情報システム)を開発・活用する研究を行っています。
(写真:都市再開発整備事業のVRモデル化)
建築設計
実際の建築設計や設計競技案の作成を通して、優れた建築デザインに関する実践的な研究を行います。具体的なデザインを行う過程で、歴史、都市、環境、構造、施工等との関係を考慮し、包括的な設計手法の開発を目指します。
(写真:最新デジタル設計ツールを用いた設計指導)
歴史意匠
西洋や日本の建築・都市の歴史を研究します。一例として、古代ギリシア建築の現地調査をして、発掘で出土した建築部材などからその姿を復元します。こうした作業から過去の建築の価値を理解するとともに、未来の建築について考える力を養います。
(写真:古代都市メッセネの劇場の復元CG)
環境・設備系
音、熱、空気、光、水(湿度)といった環境要素をコントロールし、人々の健康で快適な建築・都市空間を設計する研究分野です。人間としての生活の質= Quality of Life (QOL)の向上を目指して、気候・風土や地域文化を考慮しつつ、最新技術を効果的に利用し、居住空間から地域・地球環境までを視野に入れた研究を進めています。
音環境
建築空間の「静かさ」と「最適な響き」をつくり出すのが建築音響設計の役割です。「最適な響き」はコンサートホールだけではなく、会話のしやすさと強い関係があり、吸音材を使って響きを低減することで聞き取りやすい空間が実現します。言葉の発達段階にある幼児が過ごす幼稚園・保育園、会話しやすく快適なカフェなどを対象に、最適な音響設計のあり方について研究を進めています。
(写真:工学部音響実験室にある無響室での3次元音場再現システムによる評価実験)
温熱環境
伝統的な都市の建築と町並みには地域の気候を活かす先人の工夫や、持続可能な発展への知恵が内包されています。私たちはこれらを環境工学(特に温熱環境)の視点から明らかにし,環境負荷が小さく快適な都市空間の実現を目指します。具体的な専門は以下の4つです:専門1. 都市の温熱環境・ヒートアイランド現象,専門2. 建築のバイオクライマティック(Bio-climatic)デザイン,専門3. 環境に配慮した建築の設計教育(授業プログラムの開発,人材育成),専門4. 環境建築史。
(図:CFDによる熊本市の伝統的な都市空間(古町地区)の気流環境の再現)
構造系
建築は大地震や台風、火災などのさまざまな事象から人々の生命や財産を守るとともに、人々の営みを快適に為すことができる空間を提供する使命があります。 その空間を実現するために、建物に生じる外力(荷重)や建築物を構成する部材や接合方法の特性を研究するとともに、最適な構造設計の研究を行います。
耐震耐風構造設計
地震や台風などの自然の脅威によって建築物は影響を受けます。過去の大地震や強風で、建物にどのような被害が生じたかを分析するとともに、将来起こり得る大地震や気候変動による台風の強さの変化などによって未来の建物に作用する力を研究し、人々が安心して生活できる安全な建築を造る方法を考える研究を行っています。
(写真:風速風圧測定用の小型風洞試験装置)
高耐震性能の建築物の開発
平成26年熊本地震などでは、今まで耐震設計で考慮されていたよりも強い揺れが観測されました。建築構造の分野では、さまざまな材料を使い、柱や梁の接合方法を工夫することで、将来発生するかもしれない巨大地震などに耐えて倒壊することなく、被害を抑えて、被害が発生しても早期に復旧できる高耐震性能の建築物の開発を目指しています。
(写真:有限要素解析による耐震壁実験の検証)
材料・施工系
建築材料の革新は、建築物にこれまでにない機能を付与し得る「キーテクノロジー」であると言えます。また、資源・エネルギー問題が顕在化している現代にあって、地球環境に配慮した建築の在り方を考える上でも材料・施工系が果たす役割は非常に大きいと言えます。私たちは、建築物が抱える諸問題に、その最小単位である建築材料の視点から取り組むことで、安全・安心かつ持続可能な社会の実現に貢献していきます。
安全・安心なくらしを支える建築材料の開発
素材レベルではコンクリートの引張特性を大きく改善した各種繊維補強コンクリートの開発、部材レベルでは各種の補修・補強技術を適用した鉄筋コンクリート部材の構造性能や耐爆・耐衝撃性能の検討など、人々の安全・安心なくらしに貢献する建築材料技術について研究しています。
(写真:繊維補強コンクリートにより補強された鉄筋コンクリート梁の部材実験)
地球環境との共生を可能にする建築材料の開発
地球環境との共生を可能にする環境配慮型コンクリート技術について研究しています。ゼロセメントコンクリートや、植物などの各種生物に対して親和性を有するコンクリート、吸音・吸放湿・脱臭等の面で室内環境向上に貢献する建築材料など、環境に配慮した独自の技術開発を行なっています。
(写真:生物親和性を有するコンクリートの開発実験)